Visible Omen -0

 辺りは暗闇だった。
 何処とも知れない場所。気付いたらそこに立っていて
 ただ空を見上げていた。
 青い月を見ていた。
 とてもキレイだったから
 ずっとそうしていた。

 ふと、青い影の存在に気付いた。
 オレの隣で同じように、ずっとそうしていたようだ。
 影はオレと違って、キレイな月に見入っているのではなく、ただそうするしか無いからそうしているようだった。
 オレはそいつを知っていたような気がしたが、どうしても思い出せなかった。

――お前は、オレを知っているのか?

「…」
 影は黙ったまま。オレを見ようともしない。

――月を見ているのか?

 …。
 やはり、返事は無い。

――キレイな月だな。そう思わないか?

「ちょっと黙っててくれるかなあ」
 影は苛立った声で初めて返した。
 オレは肩をすくめて、また空に視線を戻した。

 キレイな青い月だった。

 全てを破壊したくなるような、本当にキレイな青だった。





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